どうということはない

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時刻は午前5時になろうとしていた。 仕事中にも拘わらず、不埒な妄想に想いを寄せている仙太郎であるが、決して仕事をサボっているわけではない。 いや、ある意味ではサボっているのとかわらないのかもしれないが、ようは暇なのだ。 仙太郎が夜11時に出勤し、現在に至るまで、新規客は僅か3組しか来ていない。 それもそうだろう。こんな時間にカラオケを歌いたいと思う客は、よっぽどの暇人か、カラオケマニアか、あるいは仕事が休みで、娯楽の延長線上に居る人間くらいだ。 そんな人間が多く居るとは思えない。 カラオケ店の仕事は、主に受付と、ドリンクなどの注文取りに限るが、注文を受付るために設置された内線電話は、もうかれこれ1時間は鳴っていなかった。 仙太郎が仕事を半ば放棄し、物思いに耽っているのも、これでは仕方ないというものだ。
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