愛してるよ、嘘つき【米英】

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聞き慣れた声なのに、久々に聞いた。だからかな。『もしもし』っていう一言に、すごくドキドキした。 ジム達は、相変わらずにやにやしたままで、口パクで「彼女か?」って聞いてくる。 手を横に振ってから、デスクに戻るように指示した。ジム達は少し残念そうに、肩を竦めてそれぞれのデスクに戻り始める。 「ごめん、アーサー。今皆が周りに居たからさ…」 『ああ…別に仕事の事だから気にしなくてもいいんだが…』 「…そう」 期待した分、仕事関係だと思うとテンションが下がった。 多分、さっきの会議の件なんだろう。 『来週の会議の書類、届いたか?』 「うん、さっきね。だからまだ殆ど内容分かってないよ」 『別に構わないさ、後で読んでくれれば』 「はは、そうするよ」 久しぶりに聞いたイギリスの声に安心する。電話の向こうから、雑踏の音が聞こえるからきっと外に居るんだろうな。 『それで、その会議なんだが…実はホスト国がアメリカなんだ』 「っえ?本当かい?それはまた急だな…会議は来週だったよね、ホテルは何部屋欲しいんだい?」 『ああ、その事なんだが…上司の手違いで、俺の飛行機の便だけ日にちがズレちまったんだ』 「…へぇ」 どうしよう、期待してしまう。駄目だ、今まで期待して何度失敗してきたと思ってる。 だけど、片手にペンを持って、すぐにワシントンのホテルをチェックする。 どうせだったら、俺の家の近くがいいよね。そしたらすぐに会える。 そう思った時だった。 『お前の家に泊めてくれないか?』 「………………え?」 待って、今何て言った? イギリスが?自分から?俺の家に? 『し、しょうがないだろっ!上司が1週間間違えたんだ!』 「……1週、間…?」 ってことは、今イギリスは。 「君、アメリカに居るの?」 『……おう…ワシントンの…』 「ちょっと待って!分かった!」 慌ててデスクを立ち、フライトジャケットを羽織る。ああ、書類も持って行かなくては。 イギリスに会える。 今日。今すぐ。 「迎えに行くよ、どこにいるの?」 『………ワシントンダレス空港…』 「…え?ワシントンダレス空港!?それってD.C.の方じゃないか!」 てっきりワシントンの方にいるかと思ったのに。もしかして飛行機の便を間違えたって…、ああ、こういうことか。 D.C.の方だから、道が分からなくて、ホテルも取ってない。 だから、真っ直ぐに俺を頼ってくれたんだ。イギリスは。  
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