月が 嗚呼【日英】

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「日本」 はい、イギリスさん。 「日本」 なんですか? 「日、本」 イギリスさん? 「…にほ、ん…」 どうしたんですか? 「……、…ほ…」 嗚呼、聞こえないです。 「……………」 イギリスさん。 イギリスさん。 イギリスさん。 どうしてですか? どうして、私から離れるのですか? どうして、そんな、若造なんか、と。 どうして、ですか? イギリスさん。 何故、あなたが。 私に銃口を向けているんですか? 「連合軍は敵だ」 「やっつけるしかないよ、日本」 「はい」 まさか。 あなたに刃を向ける日が来るなんて。 「信じられないです、私」 「はは、俺もだよ…日本」 「貴方と」 「お前と」 『――敵になるなんて』 ああ、でも私、嬉しいです。 イギリスさんが、私に敵意を向けています。 こんなことってありますか?ないでしょう! ああ、早くイギリスさんをこの刀で斬ってみたいです! イギリスさん、かっこいいです。 「――に、ほん…!」 ボロボロなイギリスさんも素敵です!嗚呼、紅が映えて素敵ですよ! もっと色んなイギリスさんが見たいです。 もっと、もっと、侵略すれば見せてくださいますか? あの、若造を、傷つけたら、 イギリスさん―― どんな顔をするんでしょう? 歪んでいます。 海も、空も、私も。 白くて綺麗だと褒めてくださった軍服も、今では紅が目立たないような黒服です。 イギリスさん。 私は。 (こんな戦い望んではいませんでしたよ) 「嗚呼、今夜は」 イギリスさん。 「月が綺麗ですね」  
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