願いはただ【米英】

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「あー…びっくりした…」 アメリカの家に来たのは良いが、体調が悪すぎて歩くのもままならない状態だった。 アメリカはありえないくらい優しくて、本当に結婚したんじゃないかと錯覚するくらいだった。 いや、結婚はしたんだけど政略だし。だから態度は今までと変わらないと思ったのに。 「…指輪、買ってきてあげようか?」 御遊びだと思ったのに、アメリカは真剣な表情をしていたから、何も言えなかった。 「…プラチナ、買ってくるよ。ちゃんと」 「でも、」 なんで、そんなことするんだよ。 本当に、愛されてるみたいな錯覚をさせないでくれ。 「俺は、今此処に居る君を……大切にしてあげたい」 身体が、固まる。 心臓がうるさい。頭が、痛い。 「……、え…」 声が、出ない。 イギリスが固まっていると、アメリカはぱっと笑った。 「つまり、君を奥さんっぽく扱ってあげるんだぞ!」 「っな、てめ…ッ…!」 「さあさあ、とにかく、寝てるんだぞ!俺は買い物行ってくるからね!」 布団をかけ直し、アメリカは部屋を出ていってしまった。 (な、んか…変な風になっちまった…) イギリスの心臓はまだうるさい。 熱まで出てきたのか、身体が熱くなってきた。 「アメリカ…大きくなったなあ…」 少し、離れた気がして寂しい。 今はもう兄弟でも何でもない。じゃあ、俺達って何なんだ。ただの、友人? あ、やばい。それは泣きそう。寂しい。寂し、い。 まだ、俺はアメリカをどこか、何かで繋げたいのか。 ああ、弱い。いつの間にこんなに弱くなってしまったのか。 「アメリカ、アメリカ…」 寂しい。 もう一度、突き放されたら、俺はどうなるんだろう。 死ぬかもしれない。いや、無理か。 死ねない苦しみまで味わわなければならないのか。 アメリカ。 アメリカ。 俺をひとりにしないで。 離れて行かないで。 寂しいんだ。 どんな関係でも良い。 ただ、お前と居られるのなら。 (果してそれは、愛か、恋か)  
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