願いはただ【米英】

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「ただいま!」 扉を開けると、イギリスはベッドに横になっていた。 顔は相変わらず青白いままだと思ったのに。 「イギリス?」 顔が赤い。 汗、かいてる。 心なしか、息遣いまで荒い。 熱だ。 いつもだったら、真っ先に心配する。濡れタオルとか用意して、氷嚢も作るはずだろう。 なのに。 (…エロ、い) 心拍数が半端じゃないくらい上がっている。 煽ってるわけじゃない、分かってるはずなのに。 近づいたら余計に、汗とか紅い頬とか、湿った唇とかがはっきりして、やばい。 (なんで…なんで…) ドキドキしている、興奮している。 ヤバい、駄目だ、抑え、られな―― 「……ア、メリカ…?」 「イ、イギリス…大丈夫かい?」 眼を覚ましたイギリスに、内心ドキリとしたが何とか言葉を絞り出せたのは上出来だ。 ああ、瞳まで潤んでる。どうしよう。 「…帰って、きて…くれた…」 ふにゃり、とイギリスが笑った。 その瞬間に、背筋に何かが走って、何かが壊れた。 身体が、勝手に。 ああ、どうしよう。 「イギリス、ゴメン」 「ア、メ……っ…?!」 あ、熱い。 でも柔らかい。 ヤバい、コレ止まんないかも。 すごい気持ちいい。 そういえば、なんで止めてたんだっけ? 何を、止めてたんだ? なんで?何が、起きた? アメリカの顔が、近い。 唇に冷たいのが当たってる。 なんか、入ってくる。 アメリカの、舌? 俺、キス、されてる? 「っん、…ぅ…!」 アメリカの手が両耳の横にあって、舌が入り込んで、搦め捕られる。 止めろ、止めろ! アメリカの胸板を押すのに、びくともしない。 髪が、当たってる。 サラサラだ。変わっていない。 幼い頃と。 あの、愛しい日々と。 止めろ!止めてくれ! 崩れてしまう、壊れる。 ああ、アメリカが、アメリカが、遠い。 分からない。 近いのに。 「…ゃ、めっ…ん…く」 何でだ? いやだ、アメリカ、嫌なんだ! アメリカ、いやだ、誰か。 「………っ」 アメリカが、離れていく。 嫌だ、アメリカ。 また、か。 また、俺から離れるのか。  
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