願いはただ【米英】

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「…イギリス?」 「…やだ、嫌…っ」 泣きながら首を振るイギリスは、混乱しているように見える。 せめて、軽蔑でもしてほしかった。 元兄弟とキスするなんて、気が狂ってるとしか思えないだろう? ああ、なのに何故。 「行くな、アメリカ…!」 俺を求めるの? 襲っているのは俺なのに。 拒否、しないの? 嫌って言ってるくせに。 「イギリス」 「やだっ、アメリカ、行くなっ」 「イギリス」 「やだやだやだやだやだやだっ、!」 「イギリス!」 「嫌だぁっ!!」 パン、と乾いた音が響いて、イギリスの発狂は止まった。 頬が、痛い。 殴られた。アメリカに。 唇が切れて、鉄の味がする。 アメリカに、血なんか見せたくないのに。 あれ? アメリカ、いつの間に眼鏡なんか、かけたんだ? あれ? アメリカ、お前、 「なんで泣いてるんだ」 「泣いてない」 「は?」 「泣いてないよ」 「いや」 「泣いて、ない」 むしろ泣いてるのは 「君の方が泣いてるよ」 「……え」 本当だ。 何か、悲しかったのか。 アメリカが肩に顔を埋めてきた。そのまま、ぎゅうっと抱きしめられてしまった。 「アメリカ」 「なんで、君なの」 なんで俺を見つけたの。 なんで俺は君を好きになっちゃったんだろう。 なんで、君なの。 「イギリスなんて」 大嫌いだ。 (君を好き過ぎる自分が)  
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