173人が本棚に入れています
本棚に追加
まあ、俺は何が起こっても割と冷静でいられるタイプだ。
妖精と居るから、非日常的なことはよくある。いれておいた紅茶がなくなってたりだとか、一人暮らしのはずなのに、どこからか声が聞こえてきて会話をしてたりとか。
フェアリーとか、ユニコーン、小人にも会ったことある、ていうか住み着いてるし。
だからちょっとした悪戯には慣れている。
「…だからって…コレは…」
ベルトがずり落ち、ズボンの裾を引きずって歩く状態。シャツの袖は余ってしまい、いつも使用するカップすら重たく感じる。
まあようするに、幼児化していた、と。
『あら、愛しいイギリス、どうしたの?』
『久しぶりに見る姿だわ』
「いや、あのなーお前等だろ?やったの」
『いいえ、違うわ』
『ええ、私たちじゃないわ』
「え?」
『ユニコーン!』
『貴方は何か知ってる?』
現れたユニコーンも、随分大きい。ユニコーンをこんなふうに眺めるのは久々だ。
長い首を下げて、頬に顔を擦り付けて甘えてくるが、短く鳴いて「分からない」と言った。
『ユニコーンも知らないの?』
『ごめんなさい、じゃあ私達じゃ分からないわ』
「そうか…いや、すまない。きっとお前等じゃない誰かが、悪戯したんだろう。一日経てばきっと戻るさ」
『そうね…でも、その姿のイギリスも私達は好きだわ』
『ええ、いつも泣いて、私達とずっと一緒に居てくれた時のイギリスね』
「あのなぁ…」
そんなたわいない会話をしながら、とりあえず服だけでもどうにかせねば、と部屋に戻ろうと廊下に出た時。
『あら』
「ん?どうし」
「やあ!イギリス、居るか…い?」
バァン、とベルを鳴らさずに玄関の扉を開け、押し入って来るのは一人しかいない。
いつもなら構わないが(いや、全然構うけど)、今この姿を見られるのはまずい。
ていうか、もう遅いけど。
「ア、アメリカ…!?」
「んんー…?…その眉毛、やっぱりイギリス…だよね?」
「あ、…ああ…」
「どうしたのさ、その姿」
突如現れたアメリカは、状況判断能力は中々のものらしい。近づき、膝をついて俺をじろじろと眺める。
「いや、多分妖精の仕業だと思うんだが…」
そういえば先程まで喋っていたはずの妖精もいつの間にか消えていた。
アメリカが来たからか?恥ずかしがり屋め。
「はぁー、また君の幻覚の仕業か…」
「妖精は居るっての」
「まあ何でも良いや、とりあえず着替えた方がいいね」
最初のコメントを投稿しよう!