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彼の性格がそのまま反映されてるのだろうか、この国は。
肌に纏わり付くような湿気の多さが嫌になる。
「君の家、いつもじめじめしてるって、どういうことだい…?」
「うっせぇなぁ…別に来て欲しいなんて頼んでねぇんだから、文句言うくらいだったら来るなよ」
相変わらずの憎まれ口だが、頬が赤くなってるから本当はうれしいのだろう。
(可愛いんだか、可愛くないんだか…)
でもやっぱり可愛いの方に振り子は振れるだろう。
恋は盲目、なんていうくらいだし。
アメリカは芝生にあったベンチに横になりながら、イギリスをのぞき見ていたが、彼は何をやっているかと言えば、お手製の薔薇園の手入れだった。
ふいに、ぽとり、と軽い何かが落ちる音がして何かと思えば、薄く色づいた蕾だった。
「それ、剪定ってやつ?」
「ん、ああ…可哀相なんだけどな…。でも摘んだやつはジャムとか、紅茶にするから…」
ああ、イギリスにしては珍しい兵器ではない食べ物の名前が出て来た。それだったら喜んで食べるのに。
「ジャムはスコーンにつけてもうまそうだよな!」
………前言撤回だよ、イギリス。
しかも、そのスコーンって絶対君の愛の込もった手づくりだろう…。
「君、ジャムをなんでスコーンなんかに付けようとするのさ…」
「なんかとは失礼だな! でもなんだかんだ言ってお前、いつも食べるじゃないか」
「まあ、余ったら作られたスコーンが可哀相だからね」
「あーそうかよっ」
機嫌を損ねただろうか?まあいつものことだけれど。
イギリスは、黙ってれば凄く美形だ。
さらに英国紳士、なんていう言葉があるのも納得できるくらい、女性には優しい。
今だって黙々と優しい眼差しで薔薇を見つめて、手入れをしている。
愛おしい、愛おしい、愛おしい――他人にも分かるくらい、優しい手つき。
昔はその視線の先に俺が居たはずなのに。
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