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いつから、お互い道を間違えてしまったんだろう。
たまに交わることはあっても、必ず離れてしまう。
初めて会った時だってそうだ。俺は食べ物につられて、危うくフランスなんかの弟になるところだった。結果としては、イギリスの泣き声が気になって彼の弟になることができたから良いけれど。
(なーんで、弟なんていうポジションに居るんだろう)
身体も成長すれば、自我も芽生え始める。
イギリスは、渡米する度に仕事を抱え、「お前が寝るまでは、一緒に居るよ」と言って夜遅くまで明かりをつけて、仕事をしていた。
そんな彼を見ていたら、助けたいと思うのは普通だろう? 神様は、そんな俺に力を与えてくれたんだ。
(イギリスは、最後まで理解してくれなかったけど)
彼の心に深い傷を作ったあの独立だって、彼の迷惑になりたくなかっただけなのに。
「ああ、雨降ってきたな」
彼が紅い軍服を着て、雨の中独り泣いている。
あの時は、何もできなかった。
手を差し出す事も、涙を拭うことも、雨を遮ることすらできなかった。
抱きしめることも できなかった。
そんな事を考えていると、頬に温かい何かが当たった。
目を開ければ、イギリスが俺の頬に手を添えている。
「イギリス?」
「雨、降ってるって言ってんだろ。早く家ん中入るぞ」
「あーうん、ごめん…」
「……」
そう言いながらも、イギリスは俺の頬から手を離さずに、ただじっと目を合わせている。
ぽつ、ぽつ と徐々に雨脚が強くなり始めた。
なのに、動かない。
違う、動けない。
彼のエメラルドに引き寄せられるように、そっと唇を重ねた。
「……ばーか…、濡れるじゃねーか」
「はは、ごめんね。さ、今度こそ中に入ろう」
でも、今は違う。
こんなにも近くにイギリスは居る。
手を伸ばせば、キスだって、抱きしめることもできる。
だったら、さ
「続きはベッドの中で、ってやつかい?」
「ふざけんなっ!」
こんな風に、笑っていられればそれでいいじゃないか!
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