お互い様【米英】

4/5
前へ
/37ページ
次へ
どうして同じ事しか言わないの? 怒ってる?それとも悲しい? 俺のこと、嫌いになった? わからない。 「分からないよ…イギリス」 「アメリカ…?」 教えて。 何も言わないイギリスなんて、俺の好きなイギリスじゃない。 俺を愛してくれたエメラルドが見たい。 俺に触れて。馬鹿だな、って笑って髪を撫でて。 イギリスに、手を伸ばす。 「……っ!……ぇ…?」 「イギ、リス…」 ああ、鎖が邪魔でうまく抱きしめられない。 邪魔だ。 「っ、わ…」 アメリカが、イギリスの鎖をぶち切っていく。目隠しが外されて、イギリスの視界がクリアになった。 だが、目の前にいるアメリカは、泣きだしそうな顔をしていた。 「アメリカ…!?」 「……っ」 どうしよう。 イギリスだ。 綺麗なエメラルドを持って、俺を変わらずに見つめるイギリスだ。 ああ、このイギリスが大好きなんだ。 イギリスを引き寄せて、抱きしめる。 「イギリス、ごめんね、ごめんねごめんねごめんね…俺のこと嫌いにならないで…」 なんて、愚かなことをしたんだろう。 俺は、もう少しでイギリスを失うところだったのだ。 「…怒ってない、と言えば嘘になる」 「…!」 ふいに、アメリカの頬にイギリスの手が触れて、優しく額にキスをしてくれた。 「イギリス…」 「でも、許してやる」 ふわり、と優しく微笑むイギリスにアメリカは泣きそうになる。 目元が赤く腫れて、きっと目隠しの下で泣いていたんだろう。首にも、鎖をつけた跡が残っている。 イギリスはアメリカに優し過ぎるのだ。こんなに痛々しい格好になるまでアメリカはイギリスの要求を受け入れなかったのに。 「アメリカ、俺…一度本国に帰るよ。きっと仕事が溜まってるだろうから」 「あ…俺…っ」 イギリスはふらり、とよろけながら立ち上がるとそっとアメリカの頭を撫でた。 髪がさらさら揺れる。イギリスの掌の体温が心地良い。 「お前が謝りたいと思うなら、少しは不況をどうにかしろよ」 「うん」 「それから、ハンバーガーばかり食べないで、痩せろ」 「うん、分かった」 「あと、カナダにはもうちょっと優しくしろよ?な?」 「うん、…うん」 「それで、俺を困らせたくなかったら…泣くなよ、な?アメリカ」 「…う、ん…うん…ごめ、んね…っ」 嗚呼、涙が止まらない。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

173人が本棚に入れています
本棚に追加