序の章~夕日に染まる教室で~

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ラブレターなんて、今時流行らないと俺は思っていた。 それを下駄箱の中に入れておくなんて、更に時代遅れだと思っていた。 自分の気持ち伝える手紙を、何だってあんな汚い場所に入れるんだ? ポストじゃないんだぞ。手紙はポストへ、年賀はがきは十二月二十五日までにお出し下さい。 そもそも手紙なんて、間違った人間に受け取られたらそれこそ恥ずかしいじゃないか。 これが、五分前の俺の持論。 しかし、その考えは先程、自分の下駄箱の中を覗いた時点で木っ端みじんに砕け散った。 何かが入っていた。 よく見るとそれは薄い桃色をした便箋で、どういうわけか下駄箱に投入されていた。 「まさか、ねえ……?」 待て、冷静になれ。 もしやと思ったが、一応下駄箱の主を確認。……俺の物だ。 俺は震える手でピンク色のそれを取り出すと、甘い香りが俺の思考を惑わせた。これはまさしく女の子の匂い! 便箋を裏返すと「信君へ」と俺の名前が書いてあったが、差出人の名は記載されてはいない。 ホントにホント、どっからどう見てもラブレターであった。
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