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「……?」
「我が真名を、お聞きください」
雪は目を見開く。
「私は日本の神。複数の名で呼ばれましたが、真名を、大国主神と申します」
「オオクニヌシノカミ…」
聞いたことの無い名前に、少し拍子抜けする。
「…知らない」
静かに笑う気配がある。
「因幡の白兎の話を?」
「うさぎ?」
「神話。童話にもなってたはず」
「うーん…」
譲葉の話し方がいつものそれに戻ったので、雪は表情を柔らかくする。
「ワニを騙して皮を剥がれた兎を、旅の途中の好青年が助けてあげる」
「知ってる!」
雪はぱんと手を打った。
「その前に通った男たちは嘘を教えて兎を苦しめたけど、その人は助けた」
「その男達は私の兄だ。私は、兄達が因幡のヤカミヒメのもとに求婚に出かける共を命じられて、同行していた」
私、という一人称を譲葉が使うのは珍しい。前世の名残だろうか。
彼女にしては珍しく、声は皮肉を帯びていた。
「彼らのせいで私は、二度死んだ」
「二度、死んだ?」
「そのまんまの意味」
彼女は肩をすくめる。
「助けてやった兎の呪力で、共の私がヤカミヒメの愛を得てしまった。それで私は兄らに命を狙われ、二度死んで、二度生き返った」
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