第三章

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 「もっと分かんない…」  雪が細い首をうなだれさせると、しゃんと軽い音を立てて、握った剣についた飾り房がなった。それに気づいて顔を上げる。  「これ……返す」  「いや、いいんだ」  雪はぽかんと譲葉を見る。  「いいって、どうして」  うーん、と譲葉は困ったように笑う。  「―…それが雪の物だから」  雪は大きく目を見開いた。  「どういう―…まさか」  譲葉は穏やかな笑いを浮かべる。しかしそれは、真実の表情を覆い隠すための、仮面の笑顔。  「やっぱり、知ってるんだ。あたしが誰だか、わかるんでしょう」  「だとしても、関係ないよ。雪が思い出せなければ」  そんな、と雪が抗議する間もなく、譲葉は言う。  「大丈夫。そのうち、嫌でも思い出すさ」
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