第三章

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 それを聞いて、僅かながらドキリともする。嫌でも、の一言と、その時の伏せた瞳が憂いを帯びていたことが原因のような気がするが、それだけでは無いような気もする。  ふいに譲葉は明るい表情をつくる。  「けがだけはしないで。弥生に殺されちゃう」  「…なんかムカつく。切り傷一つで、どのくらい怒るかな」  「わー!ちょっと、雪!」  慌てる譲葉を冷ややかに見やって、柄を握る手に力を入れた。  「?!」  しかし、抜けない。  「なんで?」  接着剤で貼り付けたように、溶接でもしたように。鞘から剣が抜けない。びくともしない。  「何か細工をしたんでしょ!」  いらいらと高ぶる気を静めようと足が小刻みに床の丸太を蹴った。  譲葉はにべもなく笑う。  「してないよ」  「だって、抜けない」  「嫌われたかな」  「そういう所は、昔から嫌い」  譲葉はちょっと笑う。  「雪がうちを嫌ったって言う話じゃない。雪がそれに嫌われたなってことだよ」  「あたしが?なんで。それってなに」  「剣だよ」  さも面白そうに、くつくつ彼女は笑う。
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