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「何それ!これが何かは、見れば分かるってば!」
鞘と柄の間に僅かな隙間でもないものかと爪をたててみるが、無駄な努力だった。髪の毛一本分の隙間もありはしない。
「でも、抜けなければ剣ではないのも確かかな」
「さっき使ってた!あたし見たもん。譲葉が抜けないようにしたんでしょ」
「違うって」
譲葉は困ったように笑う。
「今の君じゃあ、抜けないらしい。奴がすねてるようだから」
雪はぴたりと動きを止め、風に髪をそよがせた。肩にずしりとくる重さの剣を見て、もう一度譲葉を見る。
「奴って、これのことなの?」
「あたり」
いわれのない差別を受けた雪は、鞘の先端を少し強めに床に打ちつけた。
「ありえない、もう」
譲葉は薄く笑ってそれを見る。
「いっつもあたしはよそ者扱い」
「それは」
「違わない」
譲葉はちょっと焦ったような声を出したが、雪と目が合うと破顔した。
「すねないでよ雪」
雪はふいとそっぽを向いた。
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