第三章

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 本当に、と雪は思う。本当に、譲葉は誰かに物怖じすることがない。彼女も日本の神。その最高神たる弥生に対して、それにしてはすこし、と思うのだ。真澄も、太凰もそうだ。彼らには、雪が思う以上の繋がりがあるのかもしれない。  「……そうね」  ひどく静かな声音だった。  「でも、私は別に、過保護ではないわ」  それにはさすがに雪も笑った。譲葉と二人顔を見合わせて、声を上げて笑う。  「君が過保護でないなら」  譲葉の紫の瞳に、涙が滲む。  「世界中の人間は無関心か、それ以下だ!」  それに対して弥生は、眉間の皺をさらに深くした。  「………あなた達がずぼらなのよ。雪に悪い影響があるといけないわ。雪、こちらにいらっしゃい」  それについては、譲葉はとうとう爆笑した。  「まさにその悪影響を雪に及ぼしたのは君だ!見ろ、すっかり我が儘になって!」  弥生の額に青筋が浮いたのを見て、さすがに雪は笑いをこらえる。
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