第三章

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 その中には、手のひら大の高級そうな箱が一つ置いてあったのが見えたが、譲葉は尋常でない速さでそれを掴むと、制服の内ポケットに突っ込んだ。  「何なの?」  「預かり物」  譲葉はそう言ってウインクした。  「雪に紹介したい人は、まだ沢山いるんだ」  さりげなく話の観点をすり替えられて、雪は思わずため息をつく。  「…そうなの」  今回はあえて、問いただすことはしなかった。  「―…ここ、すごいね。二人が作ったの?」  今更ながら、この秘密基地は凄い。この丸太一つをここまで上げるにも、かなりの労力が要ったろう。  「うん。うちらと、真澄と、もう一人で。このベッドは太凰のために後から作ったんだ」  譲葉がもう一人、と言ったとき、弥生の視線が彼女のポケットのあたりを見たことから、預かり物の送り主がそのもう一人、なのだろうと直感した。  「居心地がいいでしょ。ここのブランコは、うちと真澄の力作なんだ」  驚いて指されたほうをみる。―ブランコだ。しかし、スリルはジェットコースター並みの。それは、床のあるぎりぎりの所に下がっており、こげば往復の間の半分は体が宙に投げ出される。地上十数メートルの場所で。
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