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それは、ひどく優しい玉響のおと。
そのどこまでも無の、白い世界の中で、珍しく『あの声』以外のおとがする。
その瞬間、カチン、と頭の中で何かが断ち切れる音がした。
これは、姉上の歌。
その懐かしい、本当に懐かしい歌を聴いた瞬間、これは姉上の歌だと確信した。
―“雪”に姉などいないのに。
そう感じたのを最後に、雪の意識はさらに奥へと沈んでいった。
遠くから歌が聞こえた。
―あぁ、姉上が歌ってらっしゃるのだ……。
―…え?
雪はハッとする。
あたしに、姉さんなんかいない―…。
そして突如、幼い声がする。それだけで、全身が粟立った。
『あねうえーっ!』
その時、どこまでも続くようだった白い世界が、風に霞が散るように、隠していた世界を露わにした。
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