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朦朧とした意識の中で、誰かの声を聞いた。
「ああ譲葉、この子が?」
「静かに」
やけに緊迫した声だと思った。葉月にそんな声、似合わない。
笑ったつもりだったが、うまく音にならず、うなったようになってしまった。
取り囲む人影がざわめく。
「まだ意識がある…。真澄、医務室に運ぶのを手伝ってくれるかね」
「はい、先生―…あぁ…きっとこの子です。さっきの地震、お分かりになりましたか?」
「ああ。これは―…私の生きているうちに、お目にかかれるとは」
「いいから早く医務室に運んで頂戴!」
ぴしゃりと言い放った声に周囲が静まった。安心して意識が遠退く。ああ、なぜこんなに安心するのだろう。私と彼女は、まだ会ってほんの数時間しかたっていないのに。
あとはただ、誰かの腕に揺られている感覚を覚えながら、本能のまま意識を手放した。
「ようこそ。白銀学院へ」
誰かが囁くのを聞いた気がしたけど、それも夢だったかもしれない。
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