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夢を見た。
ひどく長くて、恐ろしい夢だった。
クラスメートが猿になったり、親友と、身体はライオンで、顔が人間の猛毒を持った獣が闘ったり。得体の知れないものに追われて、夢の中の自分は逃げ回っていた。
ああ、あれは夢だった。全部、全て!
目を開けたら自分は、自分の部屋のベッドに横たわっているに違いない。どうせ、今までだって悪夢は見ていたじゃないか。よく考えれば、あんなこと、夢でない方がおかしい―…
しかし、目を開ける勇気が無いのはどういうことだろう。
何を恐れる。すべては夢だったんだから―…。
意を決して重いまぶたを開けた。
意識がはっきりしない。ベッドのまわりには薄いカーテンがひいてあって、周りの様子は分からなかった。ひとつ確実なことは、どうやらここは、あたしの部屋じゃない―…。
なるほど。と雪は呟いた。悪夢はまだ続いているわけだ。
腕を目に押し付ける。細かい切り傷が沢山あるのに気づいた。
「―気がついた?」
耳なじみのない声に、雪はさっと身構えた。カーテンの向こうに、人影がゆれる。
起きあがろうとして、無残に失敗した。四肢が使い物にならなくなっている。こんなに疲労困憊したのは、生まれて初めてだろうと思う。
「…開けてもいいかな。僕は譲葉と弥生に、君のことを頼まれているんだ。二人とも、事後処理で忙しいから」
「……」
本当だろうか。カーテンが開いた時、そこにいるのは、はたして人間だろうか。はたまた人間に化けた狒狒だろうか。
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