第二章

3/63
789人が本棚に入れています
本棚に追加
/449ページ
 ―沈黙を了承ととったらしい。カーテンが軽い音と共に開き、入り込んだ西日に一瞬視力を奪われた。  これも作戦だろうか。眩しさに目が慣れないうちに、隠した爪で引き裂くための―…。  しかし、違ったようだ。  「ああ、ごめん」  心得たように、すぐにカーテンが閉まる。何度かまばたきをして、ようやく安堵のため息をつく。  ―…人間だ。  「顔色はいいみたいだね」  ベッドの脇の机に花瓶を置きながら少年が言った。  その姿を凝視する視線を知ってか知らずか、少年はのんきな足取りで歩く。  「ん?」  初めて彼が真正面からこちらを見た。  ―…雪は激しく瞬いた。  確かに背格好からして、すらっとしていたし、声も程よく低く、耳になじんだ。見ず知らずの自分の世話をしてくれるくらいだから、人柄も良いのだろう。  それらをひっくるめて、これほどの美少年はいない。  青く見えるほどの白い肌はきめ細やかで、黒色の髪はくせっ毛。襟足にかかる程度に伸ばしてある。赤銅色の瞳は長いまつげに縁取られ、いたずらっぽい笑みをたたえていた。
/449ページ

最初のコメントを投稿しよう!