第二章

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 雪は渡された制服にそでを通していた。真澄は、おとなしくカーテンの外で待っている。  おろしたての制服は、ぱしっとしていて少し着心地が悪い。目に痛いほど真っ白なブレザー。紺のプリーツスカートは少し長かった。  Yシャツのボタンを留めながらさっきの会話を思い出し、自嘲の笑みをうかべる。  「神?」  大真面目に彼はうなずいた。  「そう。世界中の、やおよろずの神々は存在する。彼らは、ただの空想では無いんだよ」  赤銅色の瞳が、まっすぐにみつめる。  「君はここに来るまで、沢山の妖魔に追われた」  雪はうなずく。  「それは君が神の生まれ変わりだから」  ぞくり、と興奮にも似た震えが走った。心臓が警鐘のように早鐘を打つ。  「だから僕たちは、こうしてここで生きるための術を学んでる。転生者は、前世で妖魔を倒してきた。だから現世でもかたきとして、妖魔達は転生者の命をねらう」  彼は右手の親指で、とん、と自分の胸を突いた。丁度、心臓のあたりだろうか。  「―…さあ、それだけひとまず頭に入れて、制服に着替えて。そうしたら先生の所に行こう。もっと詳しくて分かりやすい説明がまってるよ」  リボンとネクタイの二つからリボンを選んで、さらに四つあるデザインから赤のチェックを手に取る。白に紺のシンプルなデザインに、鮮やかな赤は良くはえた。  「真澄、もういいよ」  カーテンを開けて外に出る。彼は隣のベッドに腰掛け、枕を抱いて待っていた。  「―…少し丈が長いみたいだね。それ以外はよく似合ってる。雪は趣味もいいな」  つま先から頭のてっぺんまで眺められては、少し居心地の悪さを感じながら赤くなった。  「じゃあ、行くか」  言って真澄は手を差し出す。意味を理解しかねて、雪は目を点にした。  「えっと―…?」  彼はまた困ったように耳をかく。  「手!まだ危ないだろ。転んだらどうすんの」  確かに、病み上がりで足元はおぼつかない。たまに目眩がすることもあるが、初対面の美少年と手をつないで歩くなんて。  雪は首を横にふった。  「いいよっ」  しかし彼は笑う。  「嫌かもしんないけど、我慢してくれよ。俺、歩く万能薬みたいなもんなんだ。男の俺が雪の看病係りになったのも、単に弥生達と仲がいいからじゃないんだぜ」  そんな意味深いことを言って、有無をいわさず手をつかまれる。
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