第二章

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 釈然としないまま考えをまとめていると、今度は真澄が不思議そうな声を出した。  「なんか、不思議だな、雪は」  「どうして?」  「普通もっと、取り乱すんだよ、みんな。記憶があるって言っても、初めから全部を覚えてる訳でもないからさ」  そうなのか、と思った。では自分も、そのうちに前世の記憶を思い出すのだろうか。  真澄は心底不思議そうな顔をする。  「で、雪は記憶も無いのに、こんな―…意味わかんない話を聞かされてもしれっとしてるんだもんな」  そう言えば、と雪自身思う。きっと、度重なる化け物の襲来に、何かが壊れてしまったのかもしれない。  そんなことを思い、自嘲とも言える笑みをこぼした。  赤銅色の瞳が語る。  「記憶があったとしても、かなり力の強い神じゃないと、断片的にしか思い出せないしね。弥生みたいに何千年分もの記憶があったとしたら、普通の人間なら脳がパンクしちゃうさ」  ああ、と雪はひとりごちた。  「じゃあ、弥生はかなり強い神さまなんだね」  真澄はうなずく。  「そう言うことだな。どの神だか、聞いてない?」  雪は首をよこにふる。  「あとで聞いてみたらいい。―…そこらへんも不思議なんだよな」   「え?」  「雪が弥生を呼び捨てで呼ぶの、あいつがそうしろって言ったの?」  「そうだけど、…あたしがそう呼んじゃ、不思議?」
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