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目的地に行く道中、永級と詫助は一羽の兎を見付けた。
しかしその兎は耳が長くなく、目も真ん丸ではなく薄目の糸目で、腹部を覆う帯と袖口が広い白装束を身にまとい木陰で鼻歌を歌っていた。
「なんですこんなとこで鼻歌とか、だれかと待ち合わせですかね」
「あぁそうだ、なっ!?」
詫助がその鼻歌を歌う兎を見ると、吹いた。
永級は「汚いですよ!」と叱り、詫助は「すまんすまん」と言いつつ着物の袖で顔を隠しながら兎の前を通り過ぎようとする。
「何をしてるのですか?」
「いいから、そのままそのまま」
永級は疑問に思いながらも詫助に言われた通りに歩いた。
詫助もそれに続いて歩く。
「~~~♪ ~~~♪ ~~……?」
そんな兎は永級か目の前を歩くのを見送るが、次に歩く詫助が道を通ると「ありゃ?」と鼻歌を止めた。
そして袖の上から詫助を指差し、
「詫先輩ですか?」
と言う兎。
そんな兎に詫助は、
「いや、人違いだ。よくある顔だろよくある」
と手で顔を隠しながら兎の前を通り過ぎようとする。
詫助はそのまま通り過ぎようとするが、兎は何度も詫助の顔を覗き見ようとする。
それを必死に回避する詫助。
あと少しで兎の追撃から逃れられると言うところで……
「なにをしてるのですか詫助氏。早くしないと置いていちゃいますよ~」
とタイミングがよく後ろで兎と話す詫助を呼び止めた。
顔を手で覆って「うわぁ~」と嘆息すると詫助に、「あっははは~やっぱり詫先輩だぁ~?」と疑問形で揉み手をする兎。
「もぉ~詫先輩ったら照れちゃって~? 兎くん久しぶりの再会に感激しちゃうよぉ~?」
「俺は会いたく無かった……」
「詫助氏!」
兎と話している詫助がいつまでも来ないので、業を煮やした永級が詫助の元に歩いて来た。
「何を駄弁っているのですか、というかこの糸目さんは誰ですか?」
爪先から頭の先まで見たあとに詫助に尋ねた。
詫助が頭を掻きながら面倒臭そうに紹介した。
「あーコイツは先月話した『逃げ腰の脱兎』、大神脱兎だよ」
「あはぁ~こんにちわぁ~? 小さな美人さぁん?」
「……なんですかこの鬱陶ししゃべり方は」
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