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「橋船影で行われる短時間の犯行に橋船の管理者は頭を悩ませていたぁ? そこで出たのがぁ轟動扇でしたぁ~? 轟動扇はいわずとしれた━━」
「ちょ、ちょっと良いか?」
饒舌に話す脱兎を前に、詫助は話を妨げた。
「さっきから当たり前のように連呼しとるが……轟動扇って誰だ?」
「………………」
「………………」
「………………あれ?」
質問した詫助だったが、永級も脱兎も二人して細い目で(脱兎の場合はもっと細く)詫助を見る。
「あ、あれ? な、なんか俺変なこと……言ったか、な……言った、みたいだな」
二人のやるせない雰囲気に詫助は肩を落とし「すみません」と言うのだった。
「あ、あはははは? 詫先輩の縄張りが本州の大和の国境だからって、轟動扇を知らないなんて……冗談きっついなぁ~?」
「いや、悪い。本当に分からん」
「……バカ」
腕の中で永級は小さく言った。
ただし、これは詫助に聞こえるように言ったので、嫌顔にも聞こえてしまった。
「え、えぇっとですねぇ?」
先ほどまで詫助を持ち上げていた脱兎も、詫助を持ち上げる術を模索するも見付からず、説明を始めた。
「轟動扇? 轟動流拳法の開祖にして前大戦、戦国の数年において伝説的な働きをした拳士なんです? その頃から、あぁ当時は西軍ね? 西軍の戦監督、大和建国後も戦監督に就任して大戦の以前の負傷で就任当初から戦監督をやる気はなかったんですぐにやめてしまったんですよぉ~? そんで先に言った通りに長門の自身の屋敷に隠居を初めてんですけど、海峡の海賊騒ぎを聞き付けて立ち上がったのが能書き語った轟動扇!?」
どうやら説明が白熱したらしく、拳を握って熱弁し始めた。
脱兎を知る詫助は珍しいものを目にしながら聞き、存在感が気迫になりつつある永級も脱兎の情報が正確か気を張る。
脱兎の熱弁は続いた。
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