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「まぁ? そんなこんなでぇ? 轟動扇が国繋号の船長になって以来、海賊はおろか不正行為をする貿易船も激減したことから絶対関税機関って呼ばれるようになったんですよぉ~?」
轟動の伝説的な活躍の一端を目の当たりにした詫助。
だが、詫助の反応は薄かった。
「“たかが五百人殺ったからって伝説って大袈裟だろ”。公式の記録に残っては無いけど、俺だってそんくらいは相手にしたことあるぞ?」
「何を対抗意識持っているのですか」
黙って聞いていた永級がバシッと手刀を額に当てられた詫助。
「いたっ」と反応して見せる詫助に脱兎は続けた。
「確かにぃ? 詫先輩の方が殺した人数は多いかもしれない? 公式記録ってのもあるやもしれない? でもですね? 轟動扇はどんな状況でも勝利してみせる最強の男なんですよぉ?」
「俺だって!」
そう名乗りを上げた詫助だったが、腕の中の永級がキリッと詫助を睨む。
「だーかーらー! 表の人間に対抗意識燃やさない!」
怒られた詫助はうつむき上唇を下唇に乗せて、駄々っ子のようになる。
「うぅ……だってぇ……」
「だってではありません。ウザ兎に代わって説明します」
「うわぁ~? 兎くんの役割をかっさらいましたよ、この美人さんわぁ?」
語り手になっていた脱兎は詫助の腕の中にいる永級に向かって言うが、永級はそれを無視して話し始めた。
脱兎は小さく舌打ちをするのだった。
「轟動扇は幾多の戦場で功績を上げました。一時左腕切断の大怪我をしましたが、自己流派である轟動流拳法を完成させさらに活躍をした。……それでですね。彼は天性の運の悪い男で、彼の行く戦場、行く戦場全てが劣勢になるのです。どんなに優勢な戦いでも気候の変動に地理的な要因、あらゆる面で彼は最悪をもたらすのです。簡単に言えば雨男です」
簡単すぎるだろ……と詫助も脱兎も思いましたが、口を挟まずに永級の話を聞く。
「そんな天性の運の悪さとそれから挽回する彼の実力が伝説であり、最強たる由縁なのです。さきの海賊団壊滅戦にしても、わざわざ一人でやる必要は微塵もないのです。ではなぜ轟動扇は一人で五百人を相手取ったか、それは自身の運の悪さで国繋号の船員であり、税関職員の命を守ることにありました」
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