睦月-始まりの月-参

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詫助は新左衛門の背中に携えた刀を外し、それを壁に突き刺してから、奥の襖に手を掛け……一気に開いた。 「お疲れさまだね、詫助氏」 「いやいや、なかなかの闘いぶり、私も感服致しました永級さま」 「……俺の解答は?」 詫助は部屋の中の二人のうちの一人の少年、永級西将に尋ねた。 永級は肘掛けに体を傾け、細く開いた目で詫助を見定め口を歪め言った。 「正解だ」 「ふんっ、とんだ茶番だ」 詫助はどかんと広間と奥の部屋の間に倒れ込んだ。 「疲れたぁ~」 「おやおやだらしがない。永級さま、このようなしつけの無い輩で本当に……強さと知恵は認めますが……」 永級の隣、永級の居る上座の下の床に直に座る小太りの老人は言う。 「僕の目には彼は正解とある。それに今は顎の毛が邪魔だが、剃り落とせばなかなかの男前になるだろ」 「左様ですが……はぁ」 永級は小さく笑い、老人はため息を着き気絶している新左衛門と大の字になる詫助、双方を見て額に手を置き頭を振った。 そしてチラリと目線を部屋の端に向かわせる。 そこには新左衛門の鈍刀に串刺しにされた、畑山銭盛の死体が置いてあった。
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