睦月-始まりの月-終

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畑山邸の最奥の部屋に永級西将と永級のお供さね丸が、詫助を待ち受けていた。 「やっぱりこれは西将が仕組んだ茶番だったわけだ」 「いかにも、君の採用試験だよ。君は見事正解を導き出した、この上なく正解だよ。おめでとう」 永級は肘掛けから離れ、大の字に寝転ぶ詫助に拍手をした。 詫助は腕で上半身をお越し永級を睨む、イタズラを見破った親のような表情だ。 「俺はな、最初から変だと思ったんだよ」 「聞こうか」 詫助は永級を睨んだまま、自分の正解に至った過程式を話し出す。 「まず最初に、畑山の前の道路、俺が見た限りじゃ三区画に人は居なかった。道路にも“家にもだ”。大阪の城下は朝だろうが夜だろうが灯りが消えることの無い、不夜城だ。そんな大阪の城下に畑山邸を中心に三区画の無人の家に道路。これは何らかの手が加わったと俺は感じた」 「なるほど、目撃者が居ないのが不正解で、目撃者が居る方が正解……なるほど」 永級が頷きながらも、詫助は続けた。 「そこら辺はまぁ大した問題じゃない。人が居ないならそのうちに殺れば良いんだからな、手始めに門番二人の首を手でねじ切った。飴細工みたいにな?」 「首が一周するなんて、どんな物語の作者にも想像出来ないよ」 永級はあのときの光景を思い出し微笑んだ。
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