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『要く~ん!』
春の声で我に返った。
―いけね。ちょっとトンでた。
『ああ、今行く』
ちなみにさっき溜め息をついたのは、別に春と2人が嫌なんじゃない。
………むしろ逆。
ほら、その、一応腰にタオル巻いてるケド、それだけだし、しかも取れそうだし、、、
なんつーか、、、り、理性が…////
赤くなった顔とそんな思いを振り払うように側の水風呂の水を頭からかぶり、
要はサウナに入って行った―。
『お、以外と熱くねぇな。』
入ってきた要が驚いたように言った。
サウナ室は白いタイルと大理石の様なものでできていた。
天井から細かい細かい水滴が降ってきて、部屋の中は霧が出たように白く霞んでいる。
その霧のおかげで部屋はあまり熱くなかった。
『ね。ボクもビックリしました。サウナって言うから、あっついのかと思ってましたよ』
『な。・・・まぁ、ミストだしな』
要はそう言って椅子に座る。
『春も座れよ』
『あ、はい!』
隣に座った春を見て、要は不思議な気分になる。
細やかな水滴は髪や肌に降り、君の身体を流れ落ちる。
白い異空間で微笑む君は、まるで妖精のようで、儚くて。
霧の中、
君が消えてしまいそうで―
唐突に、今回の旅行の本来の目的を思い出した。
――ソツギョウ。
『………っ』
『………!?か…なめ…く…ん?』
気付いたら、春を抱き締めていた。
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