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「…遥くん…」
「ん?」
掠れた控えめな声が直接耳に吹き込まれる度、変な気分に陥りそうになるが忍耐力と一刻も早く家に帰さなければという責任感で凌いでいた頃。
「雪…!」
「…!」
彰の声と共に見上げれば。
はらはらと白い結晶が儚いまでに頼りなく舞い降りてきた。
「雪だー!遥くん雪なりぃ~!」
「わわっ、ちょ、おまっ暴れんな!」
すっかりいつもの調子に戻ったかと思った彰が突然静かになる。
どうしたのかと思い振り向くと頬に生暖かい感触が押し付けられた。
「~~っ!バカ、ここ何処だと思って…」
「へへっ遥くんだーいすきなりぃ~」
むぎゅーっと彰が抱き着く。熱のせいかいつもより高い体温までもが心地良い。
調子悪いくせに俺に気ぃ遣って無理して笑ってるこいつが愛しくてたまんなくなる。
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