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―普通の恋人同士なら「可愛い寝顔だ」とか思うんだろうけど、
「徹夜明けの受験生かよ…」
まじまじと彰の顔を覗き込んでみると、薄っすらと目の下にクマが出来ていた。
―相変わらずふざけた寝顔。口くらい閉じてろよ、涎垂れてるし…。
元から厄介事には首を突っ込まないよう生きて来た筈の遥斗であったが、彰と出会ってからというもの、自然と世話焼きとしての立ち回りが定着しつつあるような気がしていた。
そっと顔にかかった髪を退ける。
思いの外こけていた頬に、遥斗は目を止めた。彰のことに関しては些細なことであってもやはり気になってしまう。
―もしかして、病気とかしてんのかこいつ…。
大病院の院長である父親を持つ遥斗にとって、その彰の急激な身体の変化は恐怖にも似た感覚を覚えさせた。
その時「ビクッ、」と弾かれたようによろめいた彰は、寝ぼけていたのか自転車に突っ掛かって派手な音と共に愛車をぶっ倒した。
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