53人が本棚に入れています
本棚に追加
「出発しまぁす!白線の内側までお下がりくださーいっ」
「……(朝から声でか)。」
「ちょっとちょっとぉ!そこのお兄さん、それ俺の自転車!」
一人で騒がしい奴を無視して彰の自転車に跨がった。
それに気付いた騒がしい奴はさらに騒ぎ立てる。
「はぁ…わかった。乗れよ」
ギャーギャーうるさい彼に見せるよう本来は荷物置き場となる部分を叩く。
すると驚いたような顔のまま彰の時が止まる。
―わっかりやすいやつだな…。
「乗るの?乗らないの?」
「の、乗る乗る!遥くん優しいなりぃ~」
ヤニ下がった顔の彰は、ベタベタと無意味に俺の身体を触りながら後部に乗った。
「ったく…」
ペダルを踏み込み、彰の愛車で走り出す。彰は珍しく大人しい。
「ぎゅ、」ちゃっかりお腹に回された腕に力が入り、背中に彰が密着する。
―今、絶対こいつアホ面してる。
運転に集中するため振り向くことはできないが、何となくそう思った。
.
最初のコメントを投稿しよう!