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「…何。」
「へっ?」
「用があるからいつまでもそこに居んだろ?」
「あー…うん。遥斗くん、今日暇かなーって思って。」
こちらから声をかけたことが余程嬉しかったのか、女は先の約束を忘れて少し声を上擦らせた。
「今日、家でクリスマスパーティーするんだけど、麻生くんもどうかなーって思って!」
「……。」
―行くわけねーだろ。
遥斗の苛立ちは募る一方で、女の話に相槌を打つことすらも億劫になっていた。
「………行かない。」
「ガタ、」と話もおざなりに立ち上がった遥斗に、疑問符一杯の表情の女は慌てて自分も立ち上がった。
あまりに唐突且つ簡潔な返答に、聞き逃してしまったらしい。
「ちょっとぉ、どこ行くの?麻生くーん」
溜め息を漏らし、ドア付近で振り返り、騒ぐ女を視界に捉えた。
「俺は絶対行かないし、それに今日俺予定あるから。じゃあ。」
ピシャリ、留めの台詞を吐き捨て、口を半開きにして固まった女を置き去りに生物室のドアを閉めた。
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