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いっそのこと、彼女がいるとでも言ってしまえば良かったかと思った遥斗は、彰の学校に向かって歩く道中、ふと我に帰る。
―彼女…?なのか?いやあいつは性別学上男だ。…彼氏?いやいやいや、ない。それは絶対ない。
悶々と考えあぐねていると、目の前で聞き覚えのある声がかけられた。
「はーるくん?どうしたなりか?」
「わっ……それはない!」
思わず考えていたことが驚いた拍子に口をついて出て来てしまい、柄にもなく慌てた様子の遥斗を見て彰がケラケラ笑う。
「何がないなりか~?さては遥くん、ヤラシイことでも考えてたんか?スケベッ」
「ちっ違ぇよ!…つか、お前鼻赤いぞ。」
落ち着いたころ、彰を見遣ると真っ赤な鼻頭に少し紅潮した頬。息も荒いような気がする。
「んー…走って来たからかな!」
「は?チャリは?」
「んーと。どっか行ったっちゃ!」
「……はぁー…。」
何とも理解に苦しむ呑気な解答に、質問すること自体が間違っていた気さえする。
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