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起きていたのか。背中から伝わる兄の鼓動に、眠気を誘われながら、娘は面倒くさそうに言った。
「泡雪が消えたって」
「……泡雪が?」
兄の声に、微かな驚きが加わる。
「消えた? 死んだのか?」
娘は小さくアクビをし、瞼を閉じた。
「それを確かめに行ったのだろう……朧は……」
娘はそれだけ言うと規則正しく寝息をたて始めた。
「……まさか、あれほどの山猫が……?」
兄の独り言が、静かに洞穴に響いた。
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