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不思議な夢をみた。
そこには俺が見慣れたモノはひとつとして無くて、ただ絵本に出てくるようなカラフルな森が広がっていて。
色とりどりのジェリービーンズの実った、青に近い葉っぱの木。
さわさわと揺れる花の植わった花壇に両側を挟まれる、黄色い煉瓦道。
空には雲ひとつ浮かんでないのに、不思議と眩しくなくて…
不思議に思って空を見れば、太陽はオレンジでも赤でもなく、淡い淡い黄色だった。
「眩しくない筈だよなぁ」
そして俺は歩く。
まるでありふれたおとぎ話…
俺は何故かエプロンを付けていて、それは脱ごうとしても脱げなくて。
甘い香りと辛い香りの混じった、あのキッチン特有の香りを感じて其処に向かおうとすると、決まって目が覚める。
そんな夢を何度も何度も繰り返し見て、俺は歯痒く気味の悪い事この上ない目覚めを強制される毎日…
いい加減知りたいものだ、あのキッチンには誰が居るのだろう。
あんな世界なのだから、料理も普通じゃないんだろうか…
現在20歳、見習いパティシエである俺の興味は…
意味通りに文字通りに、「夢に奪われて」いたのだ。
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