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賑わう江戸の裏道に、一人の少年と数人の男がいた。
しかし、男達は全員倒れていて、少年は男達の懐を漁っている。
俗に言う追剥だ。
「おやまあ。子供じゃないか」
己と男達しかいないと思っていた少年は、慌てて声の主に刀を向けた。
「成程ねえ。其の刀で己の身を守ってきたのかい。
でも、あっちには只の駄々っ子にしか見えないけどねえ」
其処に居たのは一人の女だった。
妖艶な姿に少年は戸惑ったが、ぐっと力を入れ直し、女に斬り掛った。
しかし、簡単に取り抑えられてしまう。
「放せ!!」
噛み付かんばかりの勢いで暴れる少年に、女はけらけらと笑った。
「元気な坊やだねえ」
其の言葉に益々暴れる少年を放すと、女は真剣な顔で口を開いた。
「大した坊やだけど……このままだと、何れ死ぬよ」
歯に衣着せぬ物言いだが、少年も理解しているのだろう。
口を悔しそうに結んでいる。
「死にたくなければ、家においで。死にたいのなら其処にいれば良い」
女はそう言って裏道の奥へと消えていった。
これが、闇鴉と勒七の出逢いである。
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