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「此のまま餓死でもする気かい?」
そう言った闇鴉の目の先には、勒七が食べるはずだった食事。
あの後、勒七は闇鴉の家に来たが、一向に食事を口にしないのだ。
「俺が死んでも何も変わらないよ」
そう呟いた勒七に、闇鴉は眉を上げた。
「そうさ。坊や一人が死んだって何等変わりはしない。
死にたいのなら勝手に死ねばいい」
闇鴉は刀を投げ渡す。
反射的に受け取った勒七だが、その重さに背筋が寒くなった。
持つのは初めてではないというのに……。
「死にたいのだろう?あっちが手伝ってやろうか?」
勒七は思わず刀を落としてしまった。
がたがたと震える体。
「……死ぬことよりも生きる方が余っ程難しい。覚えておきな、生きている人間には、世の限り生きる義務があるんだ。
其れに、坊やが死んだら悲しむ人間が此処に一人はいるんだよ」
そう言って闇鴉は部屋を出ていった。
残された勒七は、己の体をぎゅっと抱きしめていた。
ぽろぽろと零れる涙を拭うこと
もせずに……。
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