『見付けた日』

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初めて会った時、勒七は子供だった 生きる道を見失った子供だった 小さな小さな子供だった 「師匠、わっちは羅刹の最期を見届けたい」 勒七の声音は真剣で、澄んでいた。 「師匠と呼ぶのは今日で終わりだ。お前は己の生きる道を見付けたのだから。 そうだろう?……勒七」 闇鴉の言葉に、勒七は涙を堪えるのに必死だった。 走馬灯のように浮ぶ思い出が、何とも懐かしかった。 一人称を闇鴉に近いものに変えた時のこと 闇鴉の真似をして、目に包帯を巻いてみた時のこと 包帯を取り上げられて、代わりに額髪を伸ばそうと決意した時のこと(闇鴉に呆れられたけど) 口調を真似し始めた時のこと 風邪をひいた時のこと 稽古で怪我をした時のこと 川原に迎えに来てくれた時のこと 何時でも闇鴉と一緒だった。 けれど今……己は、此処を離れようとしている。 涙が止まらなかった。 「だらし無いねえ。しっかり己の道を歩きな。あっちより先に死んだら承知しないよ」 勒七は必死に頷いた。 初めて会った時、勒七は子供だった 生きる道を見失った子供だった 小さな小さな子供だった そして今は、立派な大人になった 生きる道を見付けた大人になった 大きな大きな大人になった    「いってきます」     また逢う日まで      さようなら 『見付けた日』完 .
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