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別れ際に彼は言っていた。
「人は別れが辛い事だと思い込んでいるが、別れられる人がいるという事が幸せだとは気づいていない」
あまりにも唐突過ぎて何を言っているのだ、と私は苦笑した。
「キミは別れが来ないとは思っていないと感じていたが、違っていたかい?」
彼は怪しげに私に笑いかけた。
「違わないけど、それを聞くということは近いうちに別れが来るのね」
私が言った事に彼は返事をしなかった。
その代わりに私の頭を撫でた。
まるで父親が泣き止まない幼い娘を慰めるように、だ。
ああ、彼はずっと前から別れが近い事を知っていたんだ。
そう感じとれた。
いや、感じとれよ、という事なのだと思った。
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