彼は言っていた。

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    いつも次に会う時は約束をしてから別れるが、その日はしなかった。   本当に、別れが来るのだ。   いよいよ、彼は消えるのだ。   居なくなるのだ。   もう会えることはないのだ。   そう思えば思うほど、彼が明日には   「昨日は約束をするのを忘れてすまなかった」   と玄関の前にやってくる気がしてならなかった。     それは現実にはならず、今、こうして彼を思い浮かべいるだけなのだ。   特別な感情はなかった。 特別な愛情もなかった。   彼と私の間には感情はなく、約束しかなかったのだ。   きっと彼自身の中の約束にこの別れも含まれていたのだろう。     だから、私は彼の事を思い出してもいいのだと思った。    
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