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しばらく無言でいた。
無音のまま時が流れていた。
このまま何も無くなればいい、私はそう思い始めていた。
「何かを無くす事は何かを増やすことと一緒だよ。減れば増えるし、増えれば減る」
彼は私に微笑んだ。
いつも彼には私の思っている事や、考えている事が手にとるように分かっていた。
私はそれに不快感を覚えたことはなかった。
むしろ、安心していた。
「今日で泣くのは終わりにするよ。やっぱり辛くないのに泣くのは本当に辛い人に失礼だ」
彼はそう言って涙を拭って、白い歯を見せていた。
どうして泣いていたの、と私は聞かなかった。
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