─Prologue─

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  皆が固唾を飲んで見守る中、 清らかな余韻を残して 唄が止む。 一瞬の静寂の後、 暖かな光が勇者の体を包み込んだ。 なんと、 土気色だった勇者の頬にみるみる赤みがさしている。 僧侶の一人が慌てて脈を取り、叫ぶ。 「生きておられます!!」 歓声が沸く。 手を肩を取り合い喜び合う階下の様を、 哀れなほど涙を流し、 天に祈る父王のその姿を、 女は… ラダトーム王女 ローラは 静かに見下ろしていた。 希望が断たれずにすんだその喜びのあまり、 二の次にされている希望そのもの… それは、 あまりにも滑稽な様だった。 (滑稽なのは… 私(ワタクシ)も同じか………) そう思った時だった。  
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