─Prologue─

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  表情はそのままに、 女は勇者が降って来た空を見上げた。 彼方に飛び去る影が三つ… なるほど─── 美しいと思ったのは、 キメラの翼であったのか…。 特に心を揺らす事もなく再び階下を見下ろすと 駆け付けた僧侶が二人、 ぴくりとも動かない勇者に向けて懸命に回復魔法をかけていた。 取り囲む人々の顔は絶望色に染まっている。 その中には いつの間にやら己が父王の姿もあった。 呆けたように、 ただ立ち尽くすその姿。 それを見た時、 初めて女の顔に表情が浮かんだ。 (それが、 一国を統べる王の姿か…!) 苦々しく奥歯を噛み、 眉根を寄せる。 だが同時に、 吐き捨てるように浴びせられた言葉も蘇った。  
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