─Prologue─

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  深く… 心を鎮めるように息を吸い、顔を上げる。 未だ血の気の戻らぬ勇者の顔色。 それを見守る人々の中から、 一人… また一人と膝を折り、崩れ落ちていく者が現れている。 広がり始める嘆きの連鎖。 いや… そもそもの始まりはいつからだったのか…───── 女は、 勇者を置き捨てて行った キメラの消えた先を視線で追った。 (こんな想いをするために… 貴方に出会った訳ではないのに……) 時折走る稲光が微かな影を映し出す。 霧に隠れていながらも、 その禍々しくも荘厳な存在感は人々の恐怖を煽るには十分であった。 その影の名は 『魔の島』 と呼ばれていた。  
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