9人が本棚に入れています
本棚に追加
――これが『死』……か……。
思ったよりもあっさりしたものじゃのう…。
あっさりしたもの……と言うより、『死後』であるという感覚すらないのだ。
生前とまるで変わらぬ、むしろ身体が軽く身体中の筋肉が活性化しているような……そんな気すらする。
「ヴァン・ホーク……か。私は大天宮に仕える天使、名はジェイドだ。よろしくな、ヴァン。」
そう言って金髪の天使……ジェイドはヴァンに握手を求める。
ヴァンは少々戸惑いながらも、その手を握り返そうと腕を挙げた。
「……んん?」
やはり何かがおかしい。
先程も感じたことではあるが、妙に身体が軽いのだ。
現に、握手を返そうと思って差し出した手は、ジェイドの手を通り過ぎ妙に高々と掲げられている。
ヴァンはもう片方の手で自分の頬を触った。
しわ1つなく弾力性のある肌。
年老い72歳で命を落とした老人の肌が、こんなに若々しいはずがない。
手を差し伸べたまま、握り返してもらえず若干不服そうなジェイドは、そんな様子を眺めながら、無言でヴァンに鏡を差し出した。
「……すまぬ。」
その鏡を受け取り覗き込んだ時、ヴァンは再び絶句することになる。
最初のコメントを投稿しよう!