9人が本棚に入れています
本棚に追加
そこに映っていた顔はヴァンであり、ヴァンではなかった。
赤みがかったボサボサ頭に妙に生意気そうな顔形、しわくちゃになり垂れ下がっていたはずのその顔はかつての張りを取り戻し、その赤い瞳は何か化け物でも見るかのようにこちらを睨み返している。
それはヴァンがまだ小さな島国の王子だった頃の姿、18歳の彼であった。
「な……何で……!?」
驚愕するヴァンにジェイドは淡々と話しかけた。
「人は死後その者が生前最も生命力の強かった頃の姿になる。ヴァン、君はその頃が最も輝いていたということだ。そうではないと天国が老人ばかりになってしまうだろう?」
ジェイドは無愛想な顔を珍しく歪ませて、冗談っぽく笑う。
――わしが一番輝いていた時期……。
父を追放したあの頃だったのか……?
世界国家を立ち上げた頃のような気がするのじゃがの…。
ヴァンは複雑な想いを胸に抱きつつ、立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!