第一章~マリア~

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立ち上がってから改めて気付いたことだが、ヴァンが眠っていた箱は棺桶のようだった。 どうりで見覚えのあるはずである。 そして、その身体には白いローブのようなものを身につけている。 ――いわゆる死に装束ってやつかいの…。 そんなことを考えながら完全に立ち上がった時、懐が妙に重いことに気がついた。 「んん?」 奇妙に思い、開いた懐に手を入れてみると、鉄のひんやりとした感覚が手に伝わった。 ――この感覚…! それは彼が死の直前まで共に過ごしたもの、手に伝わる懐かしい感覚で懐から出さずともヴァンには解った。 「マリアか!」 「マリア?」 不意に出た女性の名前にジェイドがオウム返しに聞き返す。 不思議そうな顔をするジェイドを見て、ヴァンはゆっくりと懐からそれを引き出した。
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