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ディエとレッズの目の前では"天送り"対象者が列を成してCLOUDの中枢機関へと連行されてゆく。
その光景を見てディエは唇を噛んだ。
民間の何も知らない人々の大半は「CLOUDは危険をおかしてまでジャンクヤードに赴き、人々を救済している」と考えている。実際はそれとは真逆だというのに……。
自分しかいない。
現実を知り、CLOUDを抜け出した自分ができることはひとつ。
ディエは刀を固く握りしめた。
その物音にレッズが気付いたのかディエに語りかけてきた。
「……お前、何を考えてんだ?」
「……あんたには関係ない」
ディエは踵を返した。
「おいおい、えらく冷てぇな」
「あんたを巻き込むわけにはいかない」
「もう巻き込まれてるっつーの」
「それは謝る。だがもう大丈夫だ。俺とあんたは何も関係ない。世話になった」
「なーにをかっこつけてんのかね」
レッズは頭をがしがし掻きながらため息をついた。
ディエはレッズの顔を見直す。
「え?」
「ここまで巻き込まれて『はいそうですか』と引き下がれるかよ」
「でも――」
「でもじゃねぇ。お前、政府に喧嘩でも売ろうとしてるんだろ? 俺がそれをみすみす見逃すとでも思ってんのかよ」
レッズは傍にあった拳銃を手に取った。
「レッズ……あんたまさか」
ディエは反射的に刀の鍔に指を掛けた。
しかしレッズはにやっ と笑ってみせた。
「俺も混ぜろよ。その喧嘩」
「……は?」
「シャングリラの中には政府をよく思ってない奴も多いってこった。俺の知り合いに声を掛ければ何人か集まるぜ?」
どうやらレッズは政府に殴り込む気満々らしい。
そんなレッズを見てディエは表情を柔らかくして刀から手を離した。
「勝手にしてくれ」
ぶっきらぼうにそう返したが、ディエの胸は何だか熱かった。
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