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ガチャッ。
一同は部屋に着き、智久が扉を開いた。
「…!?見るな!!」
部屋を見た智久は怒鳴る。
しかし、既に全員が"ソレ"を見てしまった。
「…キャアァアアッ!!」
目に映る敬一の姿。
だが、既に面影は残されていない。
切り裂かれた腹。
取り除かれた内臓のせいで、ぽっかりと空洞になっている。
首は一度切り離されて繋げられたのだろうか、乱雑な縫合が目立つ。
最も酷いのは顔面だ。
鼻は削がれ、目はくり抜かれ。
口は左右に大きく裂かれ、両耳が無かった。
「酷すぎる…」
裕太が呟いた。
静香は既に気絶し、奈月と美沙は放心状態になっている。
「取り敢えず、敬一を違う場所まで移動させよう…」
智久が力無く言い、裕太と二人で別室へと運んだ。
――――
「………もう嫌だよ」
不意に奈月が呟く。
その表情からは生気が感じ取れない。
「どうして…?どうして私達がこんな目に遭わなきゃいけないの!?」
癇癪を起こし、智久達に当たり散らしす。
「奈月…」
そんな彼女に何もしてあげられない。
自分の無力さを痛感していた。
「取り乱しちゃ駄目…。生きて此処を出なきゃ。じゃないと敬一くん達に申し訳ないでしょう?」
美沙が奈月を宥める。
それを聞いて少し落ち着いたのか、今度は俯いて泣き出す。
「ヒック…。怖いよ…、死にたくない…。怖いよぉ…」
美沙はそんな奈月の背中を優しく撫でた。
母の様に優しく慈愛に満ちた雰囲気だった。
「……ヒック。………スゥ、スゥ」
疲れたのか、それとも安心したのか…。
奈月は美沙の膝の上で眠りに落ちた。
「……絶対に生きて出よう」
智久の言葉に、二人は深く頷いた。
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